すばらしき世界

2021年公開、監督西川美和、主演役所広司

 

 役所広司の演技力あっての映画であったと思う。映画の内容は13年の刑期を終えた主人公、三上正夫が塀の外の世界で必死に生きようとする話、主人公の人間性こそ、この映画の重要なポイント。正義感があり、自分に正直で、しかし暴力でしか自らを表せない愚かな男という複雑な役を、しかし役所広司は見事に演じていた。

 ところでこの映画、扱うテーマが少しわかりずらい。主人公の境遇から、出所後の生きづらさを描いた作品なのかと思ったが、彼が社会復帰を目指す中で、様々な社会問題に直面する。外国人労働者に関する問題、障がい者雇用の問題、育児に関しての問題も主人公の生い立ちに大きく関係している。しかし、この映画では一見バラバラに思えるこれらの問題が、主人公の目線を通して一つのテーマを映し出している。

 そんな中でも印象的なのは、就職を決めた主人公に対し、登場人物たちが教えた「正しさ」。このシーンからその後の結末を踏まえて。視聴後はこの映画が提示した「正しさ」について考えるばかりだ。